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2017.11.15

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女性全般

子宮頸がんのHPVワクチン、打った方が良いですか?

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子宮頸がんとは?
我が国では毎年約10,000人の女性が子宮頸がんにかかり、約2,900人が子宮頸がんにより命を落としています1)。さらに若年女性に着目すると、44歳以下の女性のうち400人が毎年子宮頸がんで命を落としています。
また、子宮頚癌の若年化と出産年齢の高齢化により、妊娠中の女性に子宮頸がんが見つかる事や出産経験の無い女性に子宮頸がんが見つかり子宮摘出を余儀されなくなる場合も増えてきています。

子宮頸がんの原因となる「HPV」とは?
子宮頸がんの原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)が知られており、子宮頸がんの90%以上はHPV感染が原因であると報告されています。HPVは健康な女性の約20%に認められ2)、100種類以上の型に分類されます。HPVの全ての型が子宮頸がんに関連するわけではなく、ハイリスク型と言われる15種類が子宮頸がんに関連すると報告されています3)

HPVが子宮頸がんの原因である事が分かり、HPV感染を防ぐことで子宮頸がんが予防できる可能性が期待されワクチンの開発が進められました。海外では2006年にHPVワクチンが認可され、その有用性が認められてきました。我が国でも2013年4月から定期接種として12歳から16歳の女子を対象として公費助成で受けられる様になりました。

しかしながらHPVワクチン接種後に持続的な疼痛と運動障害などの有害事象が繰り返し報道され、定期接種開始後わずか2ヶ月で厚生労働省からワクチンの積極的な接種勧奨の一時中止が決定され4)、その後今日に至るまで接種勧奨は中止されたままです。

世界から見たHPVワクチン接種
世界的にはHPVワクチンの有用性は認められており、欧米諸国ではHPVワクチン接種による子宮頚部病変(前癌病変)の減少がはっきりと証明されています5-11)。世界保健機関(WHO)によるワクチン安全性諮問委員会(GACVS)でHPVワクチンの安全性が評価されており12)、この中で複合性局所疼痛症候群や体位性頻脈症候群などとの因果関係は完全に否定されています。

また、日本を名指しで「接種勧奨を中止したままであれば、今後子宮頚癌による死亡率増加が見込まれる」と指摘し、「今なお続いている根拠のない主張の影響によってワクチン接種率が低迷するなど、真の害悪をもたらすことを懸念している」と強い文面で憂慮を示しています。

HPVワクチンの積極的推奨の再開に向けて
これを受けて日本産婦人科医会は2017年10月「WHOによる上述の安全性評価に鑑み、HPVワクチンの積極的接種勧奨が再開されることを国に対して今後とも強く要望していく」との声明を出しました13)
HPVワクチンとの直接の因果関係は否定されましたが、ワクチン接種後に持続する疼痛などの症状に悩まされる方が依然としておられることは事実であり、今後原因や治療法の解明が急務であると思われます。しかしながら、副作用との因果関係が不明で有り、接種により防ぐことができる病気である以上、HPVワクチンの接種勧奨の再開が望まれる状況です。

最後に
現在日本国内で接種可能なHPVワクチンはサーバリックスとガーダシルの2種類です。いずれもハイリスク型のうち頻度の高い2種類(16型、18型)に有効なワクチンで、それ以外の型には無効です。現在のところすべてのハイリスク型に有効なワクチンは開発されていません。

重要なことは、HPVワクチンを接種したからといって子宮頸がんに100%かからない訳ではありません。子宮頸がんは早期に見つかれば治療可能な病気で、場合によっては子宮の温存も可能です。ワクチン接種の有無にかかわらず定期的な婦人科検診を受けることが何より重要です。

(出典元)
1 国立がん研究センター がん情報サービス http://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
2 産科と婦人科 2006;73:179-185
3 N Eng J Med 2003; 348: 518-527
4 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/kankoku_h25_6_01.pdf
5 Brotherton JM, et al. Med J Aust. 2016; 204: 184
6 Am J Public Health. 2016; 106: 2211
7 Br J Cancer. 2014; 111: 1824
8 Int J Cancer. 2016; 138: 2867
9 Lancet Infect Dis. 2014; 14: 958
10 Pediatrics. 2016; 137: 1
11 Vaccine. 2013; 32: 26
12 World Health Organization: Meeting of the Global Advisory Committee on Vaccine Safety, 7-8 June 2017 Wkly Epidemiol Rec 2017; 92: 393-402.
http://www.who.int/vaccine_safety/committee/reports/June_2017/en/
13 http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/9f232994af13b9c474d83d29ee7cb343.pdf

 

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